こども性暴力防止法
急な退職や採用辞退で、犯罪事実確認が勤務開始までに間に合わない。そのような場合に利用できる可能性があるのが「いとま特例」です。
2026年12月25日から、こども性暴力防止法が施行されます。
保育所、認定子ども園、児童発達支援、放課後等デイサービスなどでは、新しく対象業務に従事する職員について、原則として勤務を始める前に犯罪事実確認を終える必要があります。
ただ、実際の現場では、
「職員が急に退職した」
「採用予定者から直前に辞退の連絡があった」
「求人を続けていたが、勤務開始直前になってようやく採用できた」
ということもあります。
特に配置基準ぎりぎりで運営している保育所や児発・放デイでは、犯罪事実確認が終わるまで数週間待つことが難しいケースも考えられます。
このような場合に、一定の条件のもとで利用できるのが「いとま特例」です。
「いとま特例」とは?
犯罪事実確認は、対象業務への勤務を始める前に終わらせるのが原則です。
一方で、やむを得ない事情によって勤務開始前に犯罪事実確認を行う時間がなく、さらに、その職員にすぐ勤務してもらわなければ事業運営に著しい支障が生じる場合には、例外的に犯罪事実確認が終わる前から勤務してもらうことができます。
これが「いとま特例」です。
ポイント
犯罪事実確認が終わるまで絶対に勤務できない、という制度ではありません。
急な欠員などに対応するため、一定の条件を満たす場合に利用できる仕組みが用意されています。
どんな場合なら使える?
実務上分かりやすいのは、急な欠員や採用予定者の辞退などです。
例えば、急な病欠や退職、採用予定者の直前辞退などによって代わりの職員が必要になった場合が考えられます。
また、退職者が出ることを見越して早めに求人を出していたものの応募がなく、勤務開始直前になってようやく採用できたようなケースもあります。
一方で、退職予定を把握していたのに必要な採用活動をしていなかった場合や、犯罪事実確認が終わるまで別の業務を担当してもらっても事業運営に大きな支障がない場合には、同じようには考えられません。
いとま特例を使う前に確認したいこと
いとま特例を利用する場合には、その職員について、確認が勤務開始までに間に合わなかった経緯を整理しておきます。
- ✓ なぜ勤務開始前に犯罪事実確認を終えられなかったのか
- ✓ どのような採用活動をしていたのか
- ✓ なぜすぐに配置する必要があるのか
- ✓ 配置できない場合、事業運営にどのような支障が出るのか
求人を出した時期や採用活動の状況を普段から残しておけば、急な欠員が発生した場合にも経緯を整理しやすくなります。
いとま特例を使ったら、いつまでに確認する?
急な欠員などによっていとま特例を利用した場合、原則として勤務を始めた日から3か月以内に犯罪事実確認を行います。
一定の例外的なケースでは6か月以内となる場合もあります。
確認が終わるまでの働かせ方にもルールがあります
いとま特例を利用すれば、犯罪事実確認前でも勤務してもらうことはできます。
ただし、確認が終わるまでの間は、安全を確保するための対応が必要です。
特に重要なのが、原則としてその職員と子どもを一対一にさせないことです。
そのほか、必要な研修を受講してもらい、管理職が一対一になっていないか確認したり、定期的に巡回・声掛けを行ったりします。
「子どもと一対一にさせない」とは
ここは保育所や児発・放デイでは特に注意したいところです。
単純に「職員1人に対して子どもが2人いるから、一対一ではない」と判断すればよいとは限りません。
乳幼児や障害のある子どもなど、その年齢や特性によって、何か異変があったときに状況を認識したり、周囲の大人へ伝えたりすることが難しい場合があります。
そのような場合には、職員1人に対して複数の子どもがいる状況であっても、実質的な安全性を考えて配置する必要があります。
人数だけでは判断しません
子どもの年齢、発達段階、障害特性、周囲へ助けを求めたり状況を説明したりできるかまで考えて配置します。
おむつ交換や排せつ介助はどうする?
一対一にしないことが原則だからといって、必要な支援そのものができなくなるわけではありません。
一時的・突発的に、おむつ交換、排せつ介助、着替えの補助、体調不良の子どものケアなどが必要となり、その職員以外に対応できる人がいない場合には、例外的に一対一で対応できる場合があります。
ただし、最初から通常のシフトとして長時間一対一になることを前提に配置することは、原則として認められません。
やむを得ず一対一になる場合には、原則として事前に管理職へ、時間、場所、対象となる子ども、一対一になる必要性などを伝え、終了後にも報告する運用が必要です。
可能であれば、外から状況を確認しやすい場所を使うなどの対応も検討します。
保育・障害児支援の現場では、いとま特例を使うかどうかだけではなく、実際のシフトや支援方法まで考えておく必要があります。
「いとま特例」の記録・報告
いとま特例を利用した場合には、「なぜ今回は特例を利用したのか」を後から確認できるようにしておく必要があります。
例えば、次のような内容は整理しておいた方がよいでしょう。
- 求人を出していた記録
- 退職や欠員が発生した時期
- 採用が決まった時期
- 勤務開始日
- 犯罪事実確認を待てなかった理由
- 確認が終わるまでに行った安全措置
また、こども性暴力防止法では犯罪事実確認の実施状況等について帳簿の作成や定期報告の仕組みが設けられており、いとま特例についても適切に利用しているか確認される対象になります。
現場の管理者だけで判断して、後から利用理由や対応が分からなくなることがないよう、記録方法まで決めておくと安心です。
施行前に決めておきたい運用ルール
人員配置に余裕がない事業所では、施行後にいとま特例を検討する場面も出てくると思います。
だからこそ、特例を必要以上に怖がるのではなく、必要になったときに正しく使える準備をしておくことが大切です。
- ✓ 誰がいとま特例の利用を判断するのか
- ✓ やむを得ない事情を何で確認するのか
- ✓ 確認が終わるまでどのようなシフトにするのか
- ✓ 子どもと一対一にならないためにどう配置するのか
- ✓ 研修をいつ受けてもらうのか
- ✓ 利用理由や安全措置をどこに記録するのか
犯罪事実確認を勤務開始前に終えることが原則ですが、現場を止めないための例外も制度として用意されています。
原則と特例の両方を理解したうえで、普段の採用フローに組み込んでおくことが重要です。
いとま特例を含めた採用・運用体制を支援します
まつうら行政書士・社会保険労務士事務所では、保育所、認定子ども園、児童発達支援、放課後等デイサービスなどを対象に、こども性暴力防止法への対応を支援しています。
いとま特例を利用できるかの整理だけでなく、こまもろうの申請、対象職員の判断、採用フロー、求人・採用書類、就業規則、安全措置を含めた運用方法まで整理することができます。
行政書士として犯罪事実確認に関する申請手続を支援し、社会保険労務士として採用・配置や就業規則、社会保険・雇用保険の入社手続まで一体で対応できるため、制度だけを切り離さず、実際の人事労務の流れに組み込むことができます。



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