遺言を残したら財産を売却できない!? 気がねなく遺言を残すためのお役立ち情報#2

目次

遺言を残したあとで事情が変わったら

「長男に財産を相続させる遺言書を作った後で事情が変わった。不動産を売却したいけどできるの?」「遺言書に記載した財産に手をつけるのは何となく後ろめたい

そんな悩みを抱えていませんか?

遺言を残した後で、お金が必要で不動産を処分(売ったり譲ったり)しなければいけなくなったり、そもそも現金や預金は生活費として使う場面もあったりしますよね。

「遺言書を作ったあとは財産の処分など、内容の変更ができなくなってしまう」という思いや、何となく手をつけるのは後ろめたいという気持ちから、遺言をのこすことに後ろ向きになる方が少なくありません。

自分の望むとおりに財産を分配するためにも、残された家族に負担をかけずに相続をスムーズに行うためにも、遺言を残すことが大切です。

この記事を読むと、

・遺言を残した後でも財産を処分(売ったり譲ったり)できること

・財産の変更があるかもしれないときに遺言書を書くコツ

が分かります。

気がねなく遺言を残せるように、ぜひ読んでみてください。

遺言を残したあとでも財産をどう使うかは自由です

結論はすでに述べたように以下のとおりです

遺言を残した後も財産を処分できる

具体的にはどういうことでしょうか。

「遺言をのこす」という行動について2つの角度から考えてみます。

1、法律の目で見るとどういうことなのか

2、遺言のもつ力はいつから発揮されるのか

1、遺言は本人の気持ちひとつで自由に書けます

まず、「遺言をのこす」という行動は法律の目で見ると、「単独行為」とよばれます。

単独行為とは、誰か他の人が認めたりゆるしたりしなくても、その人ひとりの意思(思い、気持ち)を示すだけでOKということです。

逆に、相手が認めたりゆるしたりすることが必要な行為としては商品の売り買い(商品を売ろうと思ったら買ってくれる人が必要ですよね)などがあります。

つまり、「遺言をのこす」ことは、本人がそうしたいと思い、遺言書を書くなどしてその思いを示すことだけで成り立つということです。

2、遺言は死んだ後で力を発揮します

つぎに遺言の持つ力が発揮されるタイミングを考えます。

それは遺言をのこした本人が亡くなった時です。

逆にいうと、本人が亡くなるまでは、遺言のもつ力は発揮されないということです。

この2つを合わせると、遺言は本人の気持ちを示すだけで成り立ち、本人が亡くなった後にしか力を発揮しないため、亡くなる前に財産を使ったりしたならば「本人の気持ちが変わったのだろう」と判断するということです。

何かに違反するなどということはないのです。

事情が変わったら新しい遺言書を作りましょう

それでは、実際に遺言書を書いた後で、財産を処分(売ったり譲ったり)したときは、その遺言書はどうなるのでしょうか。

法律にはそのことについてもちゃんと書いてあります。

民法1023条

遺言の内容と抵触する生前処分の行為は、遺言を撤回したものとみなす

「抵触する」というのは、ここでは「違う」くらいにとらえてください。

例えば、「長男にA不動産を相続させる」という遺言をのこしたあとで、事情がかわってA不動産を売ってしまった場合、遺言の内容と実際の行動が違う(=抵触する)ので、その遺言は引っ込めた(撤回した)ことになるのです。

この場合、不動産を売ったなどの事情を踏まえた、新しい遺言を作ればよいということです。

トラブルを避けるための注意点

事情が変わったあとも遺言書をそのままにしておくと、本人が亡くなった後で「遺言書に書いてある財産が存在しない」というトラブルになるため、新しいものを作っておきましょう。

また本人が亡くなった後で古い遺言書が残っていた場合は、「遺言書が2通ある」と残された家族が混乱してしまうかもしれませんので注意が必要です。

きちんと古い遺言書を捨てるか、新しい遺言書にそのことを書いておくと良いですね。

書き方のコツは具体的に書かないこと

何度でも自由に遺言書を作り替えてよいことが分かりましたが、何度も作るのは大変ですよね。

とくに自筆で書く場合は、何度も書くのは面倒だと思う人もいるかもしれません。

安全で確実な「公正証書遺言」(証人をまじえて残す遺言書です)も手間と費用がかかるため、気軽には作り替えられないと思うのも無理はありません。

そんなとき、どのような遺言書の書き方をしておくとよいでしょうか。

不動産等の場合

不動産の場合は、売ったり譲ったりする予定のないものだけを記載します。

銀行の預金の場合

銀行の預金の場合、主に使っている、解約する予定のない口座は、銀行名・支店名・種別・口座番号を記載します。

このとき、預金額を記入しないことで、「残高の全部」を相続させることが可能です。

例えば以下のように書きます。

第◯条 遺言者は、ゆうちょ銀行◯◯支店に預託してある預金債権の全部を、遺言者の長男◯(昭和◯年◯月◯日生)に相続させる。

財産の一覧を自分で書かなくてよくなりました

最近の法改正(年)で、パソコン等を使って作った財産目録(財産の一覧表です)を付け加えることが可能になりました。

その場合は、目録のページごとに署名と押印が必要です。

これまでは全部自分で手書きする必要があったので、自筆の遺言書を作りやすくなりました

第◯条 長女◯に、別紙1の不動産を相続させる。

まとめ

いかがでしたか。この記事では

・遺言を残した後でも財産を処分(売ったり譲ったり)できる

・遺言書の内容と違うことをした場合は、遺言書を引っ込めたことになる

・変更する予定のない財産を遺言書に書くと良い

・銀行の預金残高までは書かない方が良い

・法改正で財産の一覧表を作るのが楽になった

ということを見てきました。

遺言書はいつでも、自由に、何度でも内容の変更や引っ込めることが可能ですので、気軽につくってみてはいかがでしょうか。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

このブログでは、今後も「気がねなく遺言をのこすためのお役立ち情報」を発信していきます。お楽しみに!

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