前回からとんでもなく間が空いてしまいました。
5年以内には「選択的夫婦別姓制度」が導入されて(願望)、「昔はこんな苦労があったのね〜」と懐かしんでもらうためのシリーズ、2記事目になります。
前回は、通称利用の広がりと限界、改姓が個人に与える影響(アイデンティティの喪失)についてお話ししました。
今回は、実際に社会保険労務士として登録する際に生じたことを紹介します。
社会保険労務士の登録とは
まず大前提のお話しとして、社会保険労務士は試験に合格するだけでは名乗ったり、仕事を受けたりすることはできません。
必要な手続きを行い、「開業」「勤務」「その他」などの形で全国社会保険労務士連合会に登録する必要があります。(実務経験か事務指定講習を受講する必要もありますね)
その際は、お住まいの都道府県の社会保険労務士会を通じて登録を行います。
県会に問い合わせることで実際に必要な書類等を教えていただけます。
沖縄県会は以下の書類が必要です。(当時)
社労士は旧姓で活動できるのか
次の前提として、社労士は旧姓で活動できるのかどうか、です。
これは事前に調べていたこともありますが「可能」なことはわかっていました。
この場合は「社会保険労務士名簿への通称併記願」を登録の際に提出することになります。
「社会保険労務士名簿への通称併記願」
「願い」というだけあって「理由」を記入する必要もあり、フェアではない気がするのは私だけでしょうか。
私は「旧姓で活動したいため」という理由になるのか分からないような「理由」を書いて提出しました。
併記願いのほかに必要な書類として「現在の姓と旧姓が確認できる書類」を求められました。
「旧姓の記載がある住民票」か、戸籍抄本の提出が必要とのことでした。
旧姓(氏)記載の住民票
第一回のときに紹介した「旧姓利用の拡大」政策の一環で、平成31年11月から住民票に旧姓(旧氏:きゅううじ)を記載することが可能になっています。
これを利用して、例えば運転免許証にも戸籍名の横に旧姓(と名)を併記することが可能です。
私は、以前住んでいた自治体でこの旧氏併記を行ったので住民票には旧姓が記載されています。
※この手続きもややこしく、戸籍謄本の提出が必要です。戸籍名の運転免許証の提示で本人確認ができないような窓口対応の混乱もあり時間がかかる&困惑した記憶があります。
一度届出した場合、変更自治体から引っ越した場合も住民票に記載され続けることになっています。
引っ越し先の南城市の住民票にも旧姓が併記されているということですね。
思わぬハプニング
しかし、ここで思わぬハプニングに見舞われます。
南城市で取得した住民票には旧姓が記載されていなかったのです。
当時の私は、引っ越しのたびに旧姓併記の申請が必要なのかもと思っていたため、住民票を諦めて、戸籍謄本を取り寄せることにしました。(住民票に旧姓を記載するのにも戸籍謄本が必要ですからね)
遠隔地からの郵送で戸籍謄本を取り寄せる場合は時間がかかります(費用も)ので、本来であれば昨年末に開業準備を済ませて今年1月1日に登録予定でしたが、それを遅らせることにしました。
書類の提出や費用の支払いなどが全て終わってから、南城市の担当者が「書類の誤り」について謝罪をしてきたという顛末でした。
余計な労力と費用がかかったことに腹が立ちますが、旧姓併記のような「慣れない」作業はミスが起きてしまうということでしょうか。
合格証書と事務指定講習修了証の「名前」はどうなる?
開業登録とは話がことなりますが、この証書類における名前についても悩みましたのでお伝えしますね。
社労士としての活動は旧姓でやっていくわけですので、合格証書や修了証も旧姓であれば一貫しておりスマートです。
実際に、開業している先輩諸氏の中には合格証書を事務所の室内に掲げている方もいらっしゃいました。
事務所を訪れたお客さんに対して、社会保険労務士であることを証明する手段でもあります。
(会員証とかもありますし、合格証書見せろなんてことは言われないと思いますが)
結論は以下の通りです。
・合格証書→旧姓不可
・修了証→可能と思われる
まず合格証書ですが、旧姓使用不可です。
念の為センターに電話で確認をしましたがだめでした。
合格証書には、試験を申し込んだ際の氏名(戸籍名)が記載されることになっています。
全国社会保険労務士会のホームページ上でも以下のように記載されています。
・紙の受験申込書に、戸籍どおりの漢字・かなを楷書で記入してください。
https://www.sharosi-siken.or.jp/application/various/
JIS規格に含まれない「外字」で登録するための手続きはあるのですが、「旧姓」の手続きは見当たりません。
試験段階で対応するのは煩雑になり難しいと思うのですが、合格後に希望者への対応としてやってくれてもいいのになぁと思います。
次に修了証です。
これは可能と思われます。
曖昧なのは私自身がやったわけではないからです。
電話で聞いてみたところ、氏名の変更が可能で、旧姓で修了証を発行できるということは確認しています。
私が悩んだのは合格証と修了証で姓が違う場合、見た人(誰が見るのかは不明ですが)を混乱させるかなということでした。
結局、戸籍名で修了証を発行してもらうことになりました。
旧姓で働くということ
旧姓併記願を提出し、その他の書類なども無事に受理されると、登録が完了です。
私の場合は1月15日に開業登録をおこなったことになります。
キリよく元旦から始めたかったのですが、ハプニングもありできませんでした。
今振り返ると、2週間の遅れは全く問題にならないですが、そういう問題とは違いますよね。
さて、社労士会(全国と地方)に登録されると、それぞれに会員証が送られてきます。
沖縄県会の場合は首にかけるストラップ付きで、会員証が送られてきました。
そこに記載された名前は「旧姓」のみで、戸籍名は記載されていません。
全国社会保険労務士会の会員証もそうです。
運転免許証や住民票のように()書きなどで戸籍名の後ろに記載されるのかなと思っていただけに嬉しい誤算でした。
この会員証の記載に自信をもって、ホームページも名刺も事務所パンフレットも、対外的な活動全てを旧姓で行なっています。
「先生」と呼ばれるのはむずがゆく、中身が伴っていないなと反省しきりですが、旧姓で呼ばれ活動できていることへの喜びはかけがえのないものがあります。
苦労の甲斐はあったと思いますが、後進がこんな苦労をせずに済むように、早期に選択的夫婦別姓制度を実現してほしいと切に願います。
まとめ
今回は、開業登録の際に必要なことや生じたハプニングについてお伝えしました。
読んでいただいた方にはわかるように、合格証書と事務指定講習修了証は戸籍名、社会保険労務士としての登録は旧姓で登録されています。
これも、制度が変更になった際には交換可能にするなどの柔軟な対応を望みたいものです。
登録にあたっては、「通称併記願い」を提出すれば良い「だけ」とも取れますが、添付書類の準備やそもそも戸籍名であれば必要のない書類を準備しなければいけない手間や費用がかかるということがわかっていただけたかと思います。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
これで終わるかと思いきや続きます。
さあこれで旧姓で活動できるぞ!と思ったのも束の間、実務を行うにあたり必要な、電子証明書の取得や銀行口座の開設についても「旧姓使用」でさまざまなハプニングがありましたので、そちらをご紹介します。
今回よりも素早く更新しますので、お楽しみに!
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