【最低賃金史上最大の引き上げ幅】 業務改善助成金の活用で賃上げの原資を確保【平均1000円超へ】

7月26日、毎年地域別最低賃金の引き上げについて目安を出す中央最低賃金審議会が答申を発表しました。

その目安は以下の通りです。

41円アップ・・・埼玉、千葉、東京、神奈川、愛知、大阪
40円アップ・・・北海道、宮城、福島、茨城、栃木、群馬、新潟、富山、石川、福井、山梨、長野、岐阜、静岡、三重、滋賀、京都、兵庫、奈良、和歌山、島根、岡山、広島、山口、徳島、香川、愛媛、福岡
39円アップ・・・青森、岩手、秋田、山形、鳥取、高知、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島、沖縄

答申の目安どおりに引き上げられた場合、全国の平均が1000円を超えるとのことで注目を集めています。

この引き上げ額は、目安制度が始まって以来最大となるそうです。

昨年の引き上げも過去最大でしたがそれを上回ったということですね。

我らが沖縄県の最低賃金は現在853円ですので、39円アップと仮定すると

892円ですね。

まだまだ900円を超えない低水準となっています。

そもそも全国一律でない点や、企業の支払い能力に配慮する必要があるため、日本の最低賃金は諸外国(ドイツ約1400円など)に比べてかなり低い金額に抑えられています。

この間のニュースを見ていても、従業員側の「物価高騰に合わせてもっと上げてほしい」という声と、中小事業主の「コスト増で頭が痛い」などの声を並べて紹介するというのが定番です。

一見すると、使用者と従業員が敵対しているかのように語られがちな最低賃金ですが、それは上記の日本の特殊性からで、最低賃金の主旨からずれていると言わざるを得ません。

本来であれば、諸外国などと同様に、最低生計費などから最低賃金を算出すべきです。

「企業の支払い能力」についても、現在の小規模で使いにくい公的助成金を大規模で使いやすい助成金へと転換して、中小企業が賃上げできるよう支援することは諸外国では当たり前に行われていることです。

最賃審議会でも、今回ご紹介する業務改善助成金の活用と大幅な拡充を求めています。

私も公的助成金の専門家・社会保険労務士として、「賃上げの原資」に悩む多くの経営者の皆さんに寄り添い、

今回の記事では、毎年の最低賃金引き上げに連動する形で活用すべき公的助成金

業務改善助成金」をご紹介させていただきます。

目次

業務改善助成金

助成金の概要は以下のとおり

賃金アップで機械設備やシステム導入費用の一部が助成されます

事業所内の最低賃金をアップすることで、生産性を向上させる機械設備やシステム導入の費用をまかなうことができます。

毎年申請することができますので、最低賃金が上がるたびに従業員の時給を引き上げている場合などに活用いただけます。

人気がある設備投資

業種導入設備例
全業種会計・売上・顧客管理等のシステム、受発注機能付きホームページ
建設業型枠自動洗浄機、ショベル機、
介護事業福祉車両、電子カルテ、自動織機洗浄機、除菌消毒器、見守り支援システム
飲食業券売機、多機能加熱調理機、換気設備、食器洗浄機、真空包装機
小売業POSレジ、自動釣り銭機、業務用冷蔵庫

過去に助成金の申請が通った事例の紹介であり、必ず認定されるとは限りません。

そのほかの業種についても事例をご紹介できますのでご相談ください。

支給要件

・労災保険に加入している

・対象従業員の時間単位賃金を30円以上アップ

対象従業員の主な条件

・1時間あたりの賃金が地域別最低賃金+30円以内
令和5年の沖縄県の場合853円〜883

・3ヶ月以上勤務していること(1人だけでよい)

助成金額

賃金引き上げ額と引き上げる従業員の人数によって助成上限額が異なります。

ここでは例として「30円コース」を紹介します。

引き上げる労働者数助成上限額()内は事業規模30人以上
1人60万円(30万円)
2〜3人90万円(50万円)
4〜6人100万円(70万円)
7人以上120万円(100万円)
10人以上※130万円(120万円)

※10人以上は特例事業者のみとなります

助成率

870円未満9/10
870円以上920円未満4/5
920円以上3/4

ポイント 最賃アップに合わせて活用できます

・最低賃金が引き上がる10月初頭より前に賃金引き上げを実施する必要があります。
(10月初頭以降も申請可能ですが、引き上がった最低賃金が基準となります)

計画書の審査・決定までに時間がかかりますが、まだ間に合います。

・労災保険に加入していることが条件ですが、雇用保険加入は条件にないため、雇用保険に加入してない従業員も申請が可能です。

・原則として毎年申請が可能です

スケジュール

助成金は厳格に申請時期や期限が定められています。

業務改善助成金はスケジュールが重要です。

設備の発注や導入、支払い、賃金の引き上げは交付が決定してからしなければなりません。

STEP
計画書提出

審査、交付決定までに通常約1ヶ月程度かかります

STEP
審査・交付決定
STEP
設備の発注・導入・支払い等、賃金引き上げの実施

かならず交付決定を受けてから実施してください

STEP
事業実施の報告
STEP
支給申請

注意点 1時間あたりの賃金額の計算法

アルバイト・パートなど時給制の従業員は一目で最低賃金を下回っているかどうかわかります。

しかし、注意が必要なのは月給制の人です。

実は、よくよく計算してみると最賃を下回ることが多いのはむしろ月給制の人なのです。

月給制の場合の計算方法

(月額総支給額ー除外すべき各種手当の金額)÷月平均所定労働時間=1時間あたりの賃金額

注意点は2点あります

まず除外すべき各種手当ては以下のとおりです。

時給換算の際に除外すべき手当

・家族手当

・通勤手当

・精皆勤手当

・休日、時間外、深夜労働割増賃金

・1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)

・臨時に支払われる手当(結婚手当など)

※これらに該当しないものは全て算入します

※家族手当、通勤手当、精皆勤手当は一律に支給されている場合は算入します

次に「月平均所定労働時間」です。

これは年間所定労働日数(365日から年間休日を差し引いたもの)÷12月×1日の所定労働時間で算出します。

※年間休日には有給休暇や特別休暇は含みません

例えば、週休2日制で祝日・年末年始が休みで年間休日が125日で、1日の所定労働時間が8時間の場合、

(365−125)÷12×8=160

160時間×853円(沖縄県の最低賃金)=136480円

のように計算します。

業務改善助成金は最低賃金から+30円までを対象に含みますので、同じ条件であれば

160時間×883円(沖縄県の最低賃金+30円)=141280円

までの労働者が対象となるということですね。

固定残業代や各種手当で額面が大きくなる場合などは要注意ですね。

パートやアルバイトは雇っていないという事業所でも、正社員で対象になる方がいるかもしれませんのでぜひ計算してみてください。

まとめ

今回は最低賃金の史上最大の上げ幅を切り口に、会社内の最低賃金を上げなければいけないのなら、公的助成金を活用して生産性向上のための設備投資資金を回収しようというご提案をさせていただきました。

弊所では助成金の専門家・社会保険労務士が前金なしで、複雑難解な申請手続きの代行を行なっております。

また、助成金を申請する上で必要となる就業規則や法定帳簿などのチェック&アドバイスも行なっております。

無料相談をおこなっておりますので、気軽にお問い合わせください。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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