今なにをすべきかが分かります
「障害年金を自分で請求したい」と決意しても、複雑な制度を前に気が滅入りそうになりますよね。
たとえば、請求方法ひとつとっても、障害年金は老齢年金や遺族年金と全く違います。
実は障害年金は、請求方法によって必要な書類も違いますし、何より受け取れる金額も大きく変わってきます。
障害年金の請求方法を知ることで得られる一番のメリットはなんでしょうか。
それは「診断書をとるべき時期が分かる」ことです。
言い換えると「診察を受けておくべきタイミングがはっきりする」ということです。
障害年金を受け取れる障害状態にある人であっても、制度そのものを知らなかったり、請求の難しさから一度はあきらめたりして、請求を決意するまでに時間があいてしまうということは多々あります。
「今はまだ」と迷っている方もたくさんいます。
しかし、時間がたてばたつほど障害年金の請求は難しくなり、今回紹介する請求方法も選択肢が限られてしまうのです。
この記事では
・障害年金を請求するときのポイント
・3つの請求方法の特徴(図解や具体例をまじえて)
・一番利益が大きな請求方法の選び方
・今できることは何か
を説明します。
受け取れたはずの年金を失わないために、今何をすべきかが分かります。
後悔のない障害年金請求のためにぜひご一読ください。
メリットが一番大きな請求方法は「認定日請求」
障害年金の3つの請求方法があります。
その中でも、受け取れる年金額が一番大きくなる請求方法は「認定日請求」です。
「結論は出た。それでいこう」
とはならないのが障害年金制度のむずかしいところです。
請求方法それぞれにメリットやデメリットがあり、「自由に選択する」というよりも、状況によって「最善の方法をとる」ことになります。
ポイントは診断書・支払い・期限の「3つの時期」
障害年金を請求する3つの方法は、じっと眺めていてもよく分からないというのが本音のところです。
3つの方法に共通する、注目すべきポイントは「3つの時期」です
1、どの時点の診断書が必要になるのか(+何枚必要か)
障害年金は、医師の作成する診断書(専用の用紙があります)によって、障害の状態や日常生活の困り具合を判断し、年金が受け取れるかどうか、等級はどれくらいかが決まります。
審査は書類審査であり、他にも本人や家族が作成する病歴などを申し立てる書類などもありますが、ほとんど診断書によって受け取れるかどうかが左右されるといわれています。
この「診断書」は、請求方法によって「診断書を取る時期」が厳密に決まっています。
必要な時点の診断書が取れるかどうかで、利益の大きな請求方法を採用できるかどうかが決まってしまうのです。
診断書が取れない場合というのは、例えば「カルテの保管義務期間(5年)が過ぎてしまった」「通っていた病院が廃業した」などです。
これは言いかえれば、この「時期」を知ることで、いつ診断・診察をうけておくべきなのかがわかるということでもあります。
診断書はカルテが保存されていれば過去にさかのぼって作成が可能だからです。
診断書は作成に費用と時間がかかりますので、適切な時期や枚数について知り、まちがいやコストを減らしましょう。
2、障害年金の支払いがいつからスタートするか
障害年金の支払いがスタートする時期は請求方法によって異なります。
「請求した月の翌月から」と「過去に障害状態にあったときから」では受け取れる金額に大きな差が生じます。
3、いつまでに請求しなければいけないか
障害年金の請求には期限があります。
老齢年金を前倒しでうけとった場合には、障害年金を請求できなくなることがあるなど、期限が変わることもあるので要注意です。
以上3つの「時期」に注目して解説します。
「てっとり早く知りたい」という方のために簡単な表にまとめましたのでご覧ください。
1、障害認定日の請求
すでにご紹介のとおり、基本的な請求方法であり、一番メリットの大きな請求の方法です。
「本来の請求」とよばれています。
障害認定日(*)において障害状態が基準以上にあるときに請求することができます
*障害認定日とは、障害の程度の認定を行う日のことです。
原則的に、障害の原因となった病気やけがについてはじめて医者にかかった日(初診日)から1年6か月が経過した日となります。
例外として、1年6か月が経過する前に病気やけがが治った(症状が固定化した)ときはその日となります。
障害認定日から3カ月以内の診断書
①20歳以降に初診日がある場合
「障害認定日から3か月以内」の障害状態を記載した診断書
②20歳前に初診日と障害認定日がある場合
「20歳到達日前3か月以内」の障害状態を記載した診断書
③20歳前に初診日があり、20歳以降に障害認定日がある場合
①と同様です
支払いは障害認定日までさかのぼる
特徴は、請求が遅れても、障害認定日までさかのぼって年金を受け取る権利(受給権)が発生することです。
年金は受給権発生の翌月から支給が開始されますので、最大限受け取れることになります。
年金をさかのぼって受け取れる期間は最大で5年間ですので注意してください。
例)40歳時点で障害認定日があり、現在50歳で障害認定日請求した場合、40歳時にさかのぼって受給権が発生し、5年さかのぼって年金を受け取ることができます。障害基礎年金2級であっても400万円弱を受け取ることができます。
注意点 障害認定日から5年以上たつとき
5年を超える期間は時効でさかのぼらないため、そのことを確認する「年金裁定請求の遅延に関する申立書」を添付します。
原則として請求の期限はありません
原則として請求の期限はありません。
ただし、障害年金を受け取るための要件(年金制度に加入しているなど)をみたしている必要があります。
基本的には障害基礎年金であれば65歳までに初診日がある、障害厚生年金であれば厚生年金保険に加入できる70歳までに初診日があるなどの必要があります。
障害認定日請求の具体例
自営業のAさん(52歳)は、平成31年4月25日に脳出血で倒れて病院に運ばれましたが、左半身にマヒが残りました。そのため、Aさんは障害基礎年金を請求することにしました。 初診日は平成31年4月25日となり、障害認定日は1年6カ月経過した日である令和2年10月25日となります。障害認定日の症状が国民年金法施行令に定める障害等級の状態にあれば、障害認定日以降に障害基礎年金を請求することで、障害認定日の翌月分(令和2年11月分)から受け取れます。
2、事後重症請求
障害認定日の障害状態が基準に達しない場合に、その後症状が悪化し、基準以上の障害状態になったときに請求できます。
請求日以前3カ月以内の診断書が必要
請求する日以前3か月以内の障害状態を記載した診断書
支払いは請求月の翌月から
請求した日の属する月から年金を受け取る権利(受給権)が発生し、その翌月から年金が支給されます。
期限は65歳まで
65歳の誕生日の前々日までに請求する必要があります。
注意点
さかのぼって請求することができません
老齢基礎年金の繰上げ請求(本来の支給開始より前に減額して年金を受け取る制度です)をしているときは請求することができません
さかのぼって受け取ることができず、請求の翌月から支給が開始されるため、請求が遅くなると受け取れる年金額が減少してしまいます。
障害が重症化し、基準に該当する可能性があるときは早めに請求する必要があります。
事後重症請求は「障害認定日請求」ができないときに行います。
カルテを入手できず、障害認定日の診断書が作成できない場合などです。
一旦、事後重症請求をして障害年金がスタートしたあとで、障害認定日の診断書が入手できたような場合、もしくは障害認定日の状態では基準に該当しないと思い込んでいた場合などはどうなるでしょうか。
この場合、すでに決定している事後重症請求による受給権を取り下げ、障害認定日の請求をすることが可能です。
事後重症請求を選択した理由書や障害認定日の診断書などを添付します。
事後重症請求の具体例
専業農家のBさん(45歳)は、平成25年10月から糖尿病で病院に通っています。最近になって体調が悪くなり、令和2年10月18日から人工透析をはじめたので障害基礎年金を請求することにしました。初診日は平成25年10月に糖尿病で初めて病院に行った日です。障害認定日の症状は軽かったので、障害等級には該当しませんでした。しかし、令和2年10月18日から人工透析(2級 相当)を開始したため、人工透析開始日以降に障害基礎年金を請求することで事後重症による障害 基礎年金を請求日の翌月分から受け取れます。
3、はじめて2級の請求
障害等級1・2級にあたらない程度の障害(既存障害)がある人が、新たに別の病気やけがによる障害(基準傷病)を負い、これらをあわせてはじめて障害等級1・2級にあたる場合に請求できます。
それぞれ請求日以前3カ月以内の診断書が必要
原則として既存障害と基準傷病のそれぞれの障害について、請求日以前3か月以内の障害状態を記載した診断書が必要です。
65歳までに該当すれば請求は遅れても大丈夫です
65歳の誕生日の前々日までに、2つの障害をあわせて2級以上となる必要があります。
ただし請求そのものは65歳以降でも大丈夫です。
65歳に到達する前に2級以上となったことが証明できればよいので、その点で事後重症請求よりもメリットがあります。
支払いは請求日の翌月から
請求日が属する月の翌月から支給が開始されます。
さかのぼって受け取ることができず、請求の翌月から支給が開始されるため、請求が遅くなると受け取れる年金額が減少してしまいます。
基準に該当する可能性があるときは早めに請求する必要があります。
注意点
初診日の証明は後の方の(基準)障害についてだけでよく、前のほうの(既存)障害の初診日の証明は必要ありません。
いま何をすべきか
3つの請求方法についての解説は以上です。
この記事では
・障害年金を請求するときは診断書・支給開始・期限の3つの時期をみる
・一番利益が大きな「認定日請求」の方法と具体例
について見てきました。
障害年金の請求をしようとする場合、まずはメリットが一番大きくなる認定日請求ができないかどうか、診断書が取得可能かどうかを調べます。
できなければ事後重症請求ができるかどうかを検討します。
これは、すでに初診日や障害認定日から時間があいてしまったあとで請求しようと考える場合です。
そうではなく、これから診察を受けようとしている場合や、20歳前の障害のあるお子さんがいる親御さんなどは、期限や診断書取得のタイミングを知ることで、
・認定日の請求ができるように、認定日の3か月以内に診察を受けておく。
・初診日が20歳前であれば、20歳到達前3か月以内に診察を受けておく。
などの行動がとれるのではないでしょうか。
さらに付け加えると、障害の原因となった病気やけがではじめてかかった病院で「初診日の証明(受診状況等証明書)」もとっておくと、あとで障害年金を請求しようと決意したときに役にたちます。
複雑な制度の壁にぶつかり、あきらめてしまわずに、解決策をさぐりましょう!
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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