障害年金ってどんな制度?
「障害年金って難しそう」「どんな人がもらえるのかな?」
そんなお悩みをお持ちではないですか?
病気やけがによって障害がのこり、生活や仕事に制限が生じた場合に受け取れる障害年金。
老齢でなく、現役世代であっても受け取れます。
一定の収入を保障することで、生活の基盤を支え、貧困におちいることを防ぐ、大切な社会保障制度です。
しかし、「年金といえば年をとってから受け取るもの」というイメージや、複雑な制度によって、障害年金のことを知らない人や「働いていたら受けられない」「精神障害では受けられない」などの誤解から、年金を受けられるのに請求さえしていない人も少なくありません。
けがや病気で障害がのこり、生活が苦しくなって、ようやく調べて障害年金にたどり着くという人もいます。
実は障害年金は、障害の発症から請求までの期間があけばあくほど、請求が難しくなったり、年金を受け取れなかったりするということが起きてしまうのです。
そんな悲しい事態を避けるためにも、障害年金について知ることが大切です。
この記事では、
・障害年金とはなにか
・どんな人が受けられるのか よくある誤解
・その種類と金額(令和4年最新版)
について、分かりやすく説明します
「いざというときのため、障害年金の基本を知りたい」「障害年金を請求してみようと思っている」人の力になれたら幸いです。
受け取れるのに請求さえしてない人が圧倒的
障害年金は、病気やけがによって障害がのこり、生活や仕事に制限が生じた場合に受け取れる年金です。
障害の原因となった病気やけがについて初めて医師などの診療を受けた日(初診日)に、どの年金制度に加入していたかによって受け取れる年金が違います。
初診日が
・国民年金加入期間に含まれる
・60歳以上65歳未満
・20歳未満なら未加入でもOK
初診日が
・厚生年金に加入していた期間
生活や仕事の上での困難さによって等級がわかれ、金額などがかわります。
制度がほとんど知られていないことと合わせて、制度への誤解も多く、請求に必要な書類を用意する大変さもあって、受け取れる状態にあっても請求さえしていないという方が多くいます。
一方で、障害年金の受け取っている人の数(令和3年度)は
障害基礎年金(国民年金)約240万人
厚生年金(厚生年金)約47万人
その差は全体で約600万人、手帳を持っている人にしぼっても約280万人です。そのすべてが障害年金をうけられるわけではありませんが、それでも多くの人が、障害年金を受けられるのに受けていないと考えられます。
国民年金…日本国内に住む20歳以上60歳未満のすべての人が加入する制度です
厚生年金…会社に所属して働く人が加入する制度です
どんな人が受けられる? 働いていても精神障害でも受け取れます
障害年金を受けられるのに受けていない人が多い、その背景には、そもそも制度や請求方法が難しく、そのせいで誤解が生じているためでもあります。
そこで、よくある誤解を解きつつ、どんな人が障害年金を受けられるのかを見ていきましょう。
よくある誤解その1 年金といえば高齢者がうけとるもの?
多くの人が、仕事を定年退職した高齢者が年金を受け取るものだとイメージしていることから、障害年金も高齢者でなければ受け取れないと思っている人は少なくありません。
障害年金は、病気やけがによって生活や仕事などが制限されるようになった場合に、現役世代の方も含めて受け取ることができる年金です。
日本年金機構HPより
年金機構も明言しているとおり、障害年金は若年でも、現役世代でも受け取れます。
「老齢年金(65歳から受け取る年金)」や「遺族年金」とは違います。
よくある誤解その2 身体の障害でないと受け取れない?
多くの人が、障害年金を受ける対象として身体の障害をイメージしています。
身体障害は外見でも判断でき、生活や仕事の大変さも分かりやすいことから、「障害」をイメージしやすく、障害年金の対象となると考える人が多いのです。
一方で、精神の障害は外見上はわからないことが多く、生活や仕事における困難を想像することが難しいため、障害年金の対象となると一般的にイメージしにくいと考えられます。
また、制度の歴史をふりかえると、精神障害が障害年金の対象となった時期が、身体障害にくらべて遅れたこともあり、精神の障害では年金を受け取れないと思っている方もいます。
精神障害のある本人であっても、「自分は障害年金をもらえないだろう」と思っている人が少なくないのが現実です。
しかし、実際は、障害年金を受け取る人を病気やけがの種類別でみると、精神障害を理由に障害年金を受け取る人は約3割にのぼり、一番多いのです。
次に知的障害が多く、あわせると半数以上です。
精神の障害は「うつ病などの気分(感情)障害」「てんかん」「知的障害」「発達障害」などに区分されています。
精神障害であっても障害年金を受け取れるし、実際は身体障害よりも年金を受け取っている人は多いのです。
よくある誤解その3 働ける人・働いている人は受け取れない?
よくある誤解に、「働ける人・現在働いている人はうけとれない」というものがあります。
この誤解は障害年金を請求することをためらわせてしまいます。
しかし、働いていても障害年金をうけとることは可能です。
障害年金を受け取るための基準は
障害年金を受け取るための「基準」をみてみましょう。
国民年金と厚生年金で共通する、障害の状態がどの程度なら障害年金を受け取れるのかを示したものです。
難しい表現もありますが、簡単にいうと以下のとおりです。
他人の介助がなければ日常生活が送れない状態。活動の範囲が、入院中ならベッド周辺、自宅なら寝室に限られる。寝たきりに近い状態
他人の介助が必要なくても日常生活が非常に困難で、働いて収入を得ることができない状態。活動の範囲が、入院中なら病院内、自宅なら家の中に限られる。
働きに出られるが、労働時間や働く内容に大きな制限がある。日常生活にはほとんど支障はない状態。
つまり、障害基礎年金は1・2級しかないため難しいですが、障害厚生年金であれば働いていても受け取れる可能性があるのです。
働くうえでの困りごとがポイントです
たとえば精神障害のある方が「働いている」といっても、その働き方(働く時間や内容)はさまざまです。
一般雇用なのか、障害者雇用なのか、施設や作業所で働いているのか、1日何時間、1週何日働いているのかなどを考える必要があります。
また職場の中で同僚や上司から支援を受けていたり、職場の外で、定着支援などを受けていたりと、ひとくちに「働いている」といってもさまざまな支援が必要な場合があるからです。
特に最近は、精神の障害のひとつである発達障害に光があてられ、一見するとわからない困難を抱えていることがメディアでも報道されるようになってきました。
例えば感覚過敏やコミュニケーションの難しさなどから、職場でさまざまな困難を抱え、苦労しながら働いている人がいます。
人間関係をつくることが難しく仕事が長続きしないなど経済的に苦しくなってしまうこともあります。
そんな方にとって、働きながらでも受け取れる可能性のある障害年金は、生活の心配を軽減し、ご自身のペースで仕事や生活をしていくうえで大切な制度です。
働く状況が適切に反映された書類が必要です
障害年金を受けられるかどうか、具体的な例を示している「認定要領」にはこう書かれています。
「労働に従事していることをもって、直ちに日常生活能力が向上したものととらえず、現に労働に従事しているものについては、その療養状況を考慮するとともに、仕事の種類、内容、就労状況、仕事場で受けている援助の内容、他の従業員との意思疎通の状況等を十分確認したうえで生活能力を判断すること。」
障害年金の請求のときに必要な医師の診断書や、状況申立書などの書類に生活や働く上での困難がきちんと反映されることが大切です。
障害年金はいくら受け取れる? 令和4年版
障害年金の金額は、老齢基礎年金や老齢厚生年金の金額とつながっており、変動があります。
障害基礎年金の額(年額と月額)
972,250円+子の加算
計算式:(老齢基礎年金を40年間おさめた金額)×1.25
月額 81,020円+子の加算+障害年金生活者支援給付金(6,275円)
777,800円+子の加算
計算式:老齢基礎年金を40年間おさめた金額と同額
月額 64,816円+子の加算+障害年金生活者支援給付金(5,020円)
子の加算
子どもを養っている人は加算があります。
第1子・第2子はそれぞれ223800円が加算されます。
第3子以降は一人につき74600円が加算されます。
加算の対象となるのは、18歳になった後の最初の3月31日までの子、または20歳未満で障害等級1・2級の子です。
*障害年金生活者支援給付金は所得制限があります。
障害厚生年金の額(年額)
障害厚生年金は、厚生年金に加入していた期間(短い場合は300月の最低保障があります)や平均賃金によって受け取れる年金額が変わります。これを報酬比例の年金額といいます。
報酬比例の年金額×1.25+配偶者の加算223800円
+障害基礎年金1級(972,250円+子の加算)+障害年金生活者支援給付金
報酬比例の年金額+配偶者の加算223,800円
+障害基礎年金2級(777,800円+子の加算)+障害年金生活者支援給付金
報酬比例の年金額
最低保障額は583,400円
*配偶者の加算は65歳以下の配偶者がいる場合に受け取れるものです。
障害年金を受け取るための要件
障害年金を受け取るためには、障害の等級が基準に該当していることや初診日(障害の原因となった病気やけがについて初めて診療を受けた日)に年金制度に加入しているほかに、保険料を一定程度納めていた実績が必要です。
しっかりと覚えて、いざというときに要件をみたしていなかったということのないようにしましょう。
厚生年金に加入している場合は、同時に国民年金に加入していることになりますが、国民年金の保険料を支払う必要はなく、基本的に未納ということはありません。
国民年金のみに加入している人や、基準となる期間に国民年金のみ加入した期間がある人が注意するポイントとなります。
原則 3分の2以上納付済み
初診日の前日において、初診日の属する月の2か月前までに国民年金の加入期間があり、その期間のうち、3分の2以上の期間が納付済みか免除を受けていること。
*免除は学生納付特例や若年者納付猶予を含みますが、未納は含みません。
例)2022年4月5日が初診日の場合
2022年4月4日の時点で判断します。
2022年2月以前の国民年金加入期間の3分の2以上が納付済みか免除である必要があります。
特例 直近1年間に未納がない
初診日の前日において、初診日の属する月の2か月前までの直近の1年間に保険料の未納がない。
初診日において65歳未満であり、初診日が令和8年3月31日以前にあることが必要です。
例)2022年4月5日が初診日の場合。
2022年4月4日の時点で判断します。
2021年3月〜2022年2月までの1年間に未納がない(納付済みや免除を受けている)
20歳前に初診日がある障害基礎年金は納付要件はありません。
まとめ
いかがでしたか?
この記事では
・障害年金を受け取れるのに請求していない人が多いこと
・障害年金は働いていても、精神障害でも受けられること
・障害年金の金額やうけとるための条件
が分かりました。
制度や請求方法の難しさから、まちがったイメージをもってしまい、障害年金を受け取れないと思っている人が少しでも減ってほしいと思っています。
このブログでは今後も、初診日の大切さや自分で請求を行うときのポイントなどについて発信していく予定です。そちらもお楽しみにしていてください。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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