ご自身でできること
障害年金は、仕事をしていても、精神の障害であっても受け取ることができます。
一定の収入を確保し、経済的不安をへらすことで、ご自身の仕事や生活について前向きに考えることができる年金です。
「どれくらいの障害の状態なら障害年金を受けられるのか」
「自分はいくらぐらいの障害年金をうけられるんだろう」
障害年金を請求したいと思った時に、こんな不安や疑問を抱えていませんか?
障害年金は制度が複雑で難しく、そもそも制度を知らない人も多くいます。
日常生活や職場の中で困難があっても、どれくらいの障害の状態であれば障害年金がうけられるのかが分からないと、請求にふみだせませんよね。
特に精神の障害は、客観的に指標が示されている身体障害と違い、多種多様で症状もさまざまです。
実は精神の障害は、障害年金の審査の際に「日常生活の困り具合(生活能力があるかどうか)」が特に重視されるのです。
そして、障害年金は医師の診断書による書類審査でほとんどが決まってしまいます。
そのため、診断書にご自身の困り具合を正確に反映させる必要があるのです。
ここで、
「診断書は医師が作成するから患者本人や家族は手出しができないのでは」
と思う人もいるかもしれません。
しかしそんなことはありません。
ご本人やご家族にもできることがあるんです。
あとで詳しくみていきますが、請求をする方ご自身の障害の状態、日常生活の困り具合を、診断書の様式にそってメモなどにまとめ、医師の参考にしてもらうことができるのです。
診断書作成は医師にとっても難しいため、これは大きな力を発揮します。
この記事では
・精神の障害年金で重視される「日常生活能力」とは
・日常生活、社会生活の7つの場面にわけた判定のポイント
・発達障害の場合の具体例
・どの等級にあたるかの早見表の使い方
について説明します
いわば、「障害年金をもらえる診断書」に近づくための依頼方法がわかってもらえると思います。
複雑な制度を前に、障害年金の請求をあきらめてしまう前に、ぜひご一読ください。
日常生活の困り具合が重視されます
障害年金は3つの要件すべてをみたした場合に受け取ることができます。
・初診日に年金制度に加入していたかどうか
・保険料を納めていたかどうか
・障害状態が基準以上にあるかどうか
そのうちの一つ、「障害状態が基準以上にあるかどうか」をおおざっぱに判定する「障害認定基準」については以下の記事で解説しました。
今回は認定基準をさらに具体化した「ガイドライン」に沿って、診断書の各項目がどのように判定されるのかをみていきます。
障害年金の審査では、請求する本人の障害の状態について、医師の診断書を中心に、「障害認定基準」に照らし合わせて決定を行います。
しかし、精神の障害は身体の障害(たとえば)と違い、「両目の視力の和が0.04以下のものは1級に該当する」などの客観的な指標がありません。
そのため、精神の障害は、「日常生活の困り具合」を重視して年金が受け取れるかどうかや等級を判断することになります。
あいまいさから生じていた不公平
認定基準が大まかだったせいもあり、不支給になる比率が地域ごとにばらつきがあり、過去には最大で約6倍もの差があったのです。
それでは不公平だということで、精神の障害の等級を判定するガイドラインが平成28年9月1日から運用されることになりました。
ガイドラインによって、より具体的な日常生活の困りごとと、障害年金の等級との関係性がわかるようになりました。
つまり、障害の程度によって「生活にどれくらい困っているかどうか」を判定し、障害年金がもらえるのかどうかや、もらえるとしたら等級はどれくらいに判定されるのか、がより具体的でわかりやすくなったのです。
診断書に書かれた、日常生活の困り具合を数値でポイント化し、等級にあてはめることもできるようになりました。
診断書による書類審査のみという厳しさ
障害年金の審査は書類審査のみです。
書類とは主に医師の作成した診断書のことです。
精神の障害用の診断書には「日常生活状況」や「日常生活能力の判定」などの項目があります。
診断書に、障害の程度や生活の状態が正確に反映されているかどうかが、年金を受け取れるかどうかの分かれ目となります。
しかし、医師の中でも、日本年金機構から依頼を受けて障害年金の審査をする「認定医」にはガイドラインの研修等がおこなわれますが、そうでない医師には資料が配布されるのみというのが現状です。
医師も障害年金の診断書の作成について詳しく知らなかったり、そもそも診察の際に日常生活の困り具合を把握していないということもあったりします。
例えば「食事の準備」の項目ひとつとっても、
「ご飯たべてますか?」
はい、(家族が準備してくれている食事を)食べてます
ご飯が食べられているなら大丈夫。
診断書は「(一人で)食事の準備ができる」に記入しよう。
こんな場面が実際に起こりうるのです。
そのため、これから解説する項目にそって、ご自身の日常生活の困り具合をメモしておき、医師が診断書を作成する際の参考にしてもらうことをおすすめします。
請求する本人は正確に困り具合を伝えることができ、医師も正確な情報を参考に診断書を作成することができるからです。
等級判定の流れ
ガイドラインをつかった等級判定の流れは以下のとおりです。
「さまざまな要素を考慮」とありますが、流れを見ると、診断書が中心となっていることがわかります。
今回の記事はこのSTEP1の「日常生活能力の判定」と「日常生活能力の程度」がどういうものなのかをみていきます。
等級の目安表
ガイドラインで示された等級の目安です。
判定平均/程度 | (5) | (4) | (3) | (2) | (1) |
3.5以上 | 1級 | 1級又は2級 | |||
3.0以上3.5未満 | 1級又は2級 | 2級 | 2級 | ||
2.5以上3.0未満 | 2級 | 2級又は3級 | |||
2.0以上2.5未満 | 2級 | 2級又は3級 | 3級又は3級非該当 | ||
1.5以上2.0未満 | 3級 | 3級又は3級非該当 | |||
1.5未満 | 3級非該当 | 3級非該当 |
「日常生活能力の判定」と「日常生活能力の程度」の評価によって等級が決まることがわかります。
こちらは今の段階では「そういう表がある」ぐらいで軽く流してもらえたらと思います。
こちらで具体例をまじえて解説しています。
特に大切なのは「日常生活能力の判定」
診断書に記載される項目の中でも特に大切なのは「日常生活能力の判定」です。
ご自身の障害の状態を正確に診断書に反映させるために欠かせない項目となります。
以下の日常生活の7つの場面においてどれくらいの制限(困り具合)があるかを評価します。
・適切な食事
・身辺の清潔保持
・金銭管理と買い物
・通院と服薬
・他人との意思伝達及び対人関係
・身辺の安全保持及び危機対応
・社会性
以上の7つの項目について、
・できる
・自発的にできる(おおむねできる)が時には助言や指導を必要とする
・(自発的かつ適切に行うことはできないが)助言や指導があればできる
・助言や指導をしてもできない、もしくは行わない
の4段階で評価します。
「どの程度の助言や指導があれば『できる』ようになるか」で判断します。
助言や指導には身体介助は含まれません。
共通して大切なことは
「判断にあたっては単身で生活するとしたら可能かどうかで判断してください」
という注意書きです。
診断書の中でもわざわざ赤字で表記されています。
例にあげたように、親元で暮らしている場合に、親が食事をつくってくれたものを「食べる」ことができても「食事の準備」ができているとはいえず、単身で生活するとなると、ひとりで食事を準備することができるのかどうかが判断の基準になるということです。
ここで重要なことは、当事者も家族など支援者も、障害の状態や生活の困り具合を客観的に把握していないことがあるということです。
たとえばご家族は、長年困難に対応してきたため、慣れが生じていたりすることがあるからです。
また、「できない」ということを言いにくい、親心や人情からできるだけ「できる」と思いたいなどの心情もあるかもしれません。
私の経験でも、ご家族が役所に障害年金を受け取れるかどうかを聞きに行き、専門知識のない担当者に「◯◯さんは◯◯ができるから受けられないよ」と追い返されたという事例がありました。
その際に、ご家族は(おそらく窓口の担当者も)「ひとりで生活するとしたら」という注意書きは知らなかったといいます。
こういうことが起こりうるのです。
しかし診断書の注意書きには
「独居であっても、日常的に家族の援助や福祉サービスを受けることによって生活できる場合(現にうけてなくても必要である場合)」は「支援の状況(必要性)を踏まえ」てとあります。
過大評価には注意しつつ、客観的に生活の困り具合をふりかえってみましょう。
「日常生活能力の判定」のポイント
これからさらに具体的にみていきます。
その際のポイントは二つです。
・一人で生活するとしたらと仮定する
・同年代の健常者を想定する
医師に渡すためのメモも忘れずにとっておきましょう。
発達障害を例に、生活の各場面で起こる困りごとを例示してみましたので、そちらも参考にしてみてください。
日常生活能力の判定 7つの場面
適切な食事
診断書には以下のように記載されています。
「配膳などの準備も含めて適当量をバランスよくとることがほぼできるなど」
ポイント
ポイントは以下のとおりです。
「配膳などの準備」は調理や後片付けが含まれます
「適当量をバランスよく」は食事量の偏りがなく、朝昼晩の3食をきまった時間にとり、栄養を考えた献立を一人で考え、準備することができるということです。
つまり、ひとりで栄養バランスを考えた食事を作り、ほとんど決まった時間に三食を食べ、後片付けもするということです。
コンビニ弁当や外食ではなく、本人がひとりでできるかどうかがポイントです。
医師に配布される診断書の「記載要領」も参考になります。
具体例
一人で食事を作ることはできず、食べたいものの希望も言わないため、家族が1日3食の食事を準備しています。本人が食べたい時に食べ、片付けはしません。1日1食になるときもあり、全く食べない日も1週間に1〜2日あります。
→「自発的かつ適正に行うことはできないが助言や指導があればできる」に該当すると考えられます。
発達障害で考える困りごと例
・気に入ったものを飽きるまで長期間食べ続ける(偏食)
・感覚・味覚過敏で食べられるものが限られる、献立を考えらない(集中できない)
・集中しすぎて一日一食になるか食べない日もある(不食)
身辺の清潔保持
「身辺の清潔保持」
診断書には以下のように記載されています。
洗面、洗髪、入浴等の身体の衛生保持や着替え等ができる。また、自室の清掃や片付けができるなど
ポイント
健常者であれば毎日行う、洗面・整髪・入浴等や、朝晩の着替えができるかどうか。季節や気候、外出の場面に合わせた衣服の調整などができるかどうかが問われます。
また、自分の部屋の掃除や片付けをどれくらいの頻度で行うか(行えないか)、自発的にできるか(できないか)も問われます。
日常普段の身だしなみや自室の様子は、医師には見えにくい
診察の際は家族が身だしなみを整えたり、服装を決めたりするため、日常の様子が伝わりにくいということがあります。
具体例
自分から入浴しようという意欲は見られず、週に1、2回家族が助言をして入浴させます。身体を洗うことはできます。自分の部屋を自主的に片付けることもないため、いつも物が散らかっており、家族が週に1度清掃をします。
→「自発的かつ適正に行うことはできないが助言や指導があればできる」に該当すると考えられます
発達障害で考える 困りごと例
・整理整頓ができず、押し入れなど一ヶ所に何でもまとめて入れてしまう
・衣服や物など必要なものを探すのに時間がかかってしまう
・自分の部屋であっても、鍵や財布などをなくしてしまうことがよくある
医師に配布される診断書の「記載要領」も参考になります。
金銭管理と買い物
診断書には以下のように記載されています
金銭を独力で適切に管理し、やりくりがほぼできる。また、一人で買い物が可能であり、計画的な買い物がほぼできるなど。
ポイント
本人が、必要なものを必要な分だけ適正な価格で購入することができるかどうか、一度に使ってしまうのではなく、先の生活を見越して買い物ができるかどうかが問われます。
1週間先、1ヶ月先などの先の生活を見越すスパンも判断材料となります。
当然、無駄遣いをしないことも問われます
具体例
外出が一人でできないため、買い物の際は家族が付き添います。必要な物も把握できていません。金銭管理はほとんどできず、必要でないものを大量に買ってしまったりすることもあるため、必要な金銭を何日かに一度手渡しています。
→「助言や指導があればできる」に該当すると考えられます
発達障害で考える 困りごと例
・1人で買い物に行くことはできるが、混み合った店舗の中では他人の存在が気になり混乱して疲れてしまう。
・店内の音や照明、話し声や騒音が気になり買い物を続けることができない。
・購入したことを忘れてしまい、何度も同じものを買って賞味期限を切らしてしまう。
・買う物を決めるのに時間がかかる。また、必要な物を忘れてしまい何度も買い物をしなければならない
医師に配布される診断書の「記載要領」も参考になります。
通院と服薬(要・不要)
診断書には以下のように記載されています。
規則的に通院や服薬を行い、病状等を主治医に伝えることができるなど。
自発的に通院や服薬ができるかどうか、医師とのコミュニケーションも問われます。
ポイント
・病気にかかっていることを理解していて、薬を決まった時間・量で服用することができるかどうか
・自身の病気の症状や薬の副作用について主治医に伝えることができるかどうか
薬の飲み忘れや飲み方の間違いの回数や大量服薬をしてしまうかどうかなども判断材料となります。
具体例
家族の付き添いがなければ病院に行く気力がありません。主治医に症状を聞かれても返答しないため、家族が代わりに答えます。一度、薬を大量に服薬をしたことがあるため、心配で家族が薬を管理し、その都度手渡しています。
→「助言や指導があればできる」に該当すると考えられます。
発達障害で考える 困りごと例
・主治医に症状を伝えようとしても何を言うか忘れてしまい、言いたいことを言えない
・薬を捨ててしまったり、なくしてしまったりする
医師に配布される診断書の「記載要領」も参考になります。
他人との意思伝達及び対人関係
診断書には以下のように記載されています
他人の話を聞く、自分の意思を相手に伝える、集団的行動が行えるなど。
コミュニケーションが問われる項目です。
必要に応じて自分から話せるかどうか、友だちをつくれるかどうかなどが判断材料となります。
発達障害の方などは特に苦手とすることも多いのではないでしょうか。
ポイント
・相手の言っていることを理解し、自分の意見や意思を必要に応じて伝えられるかどうか
・聞く側や周囲のことを考えて自分の意思を伝えられるかどうか
「集団的行動」は、他のメンバーと一緒に行動できるということです。
自分から友人をつくり、継続的につきあうことができたり、他者の行動に自分を合わせたり協調したりすることが含まれます。
具体例
ご近所への挨拶など最低限の人付き合いができず、友人をつくることにも積極的になれず、継続して付き合うことも難しいようです。そのため友人もなく、家族以外とはコミュニケーションがとれないため隣近所で孤立しがちです。
→「助言や指導があればできる」または「助言や指導をしてもできないもしくは行わない」にあたると考えられます
発達障害で考える 困りごと例
・相手の話を言葉通りに受け止めてしまう
・人とのコミュニケーション、距離感がわからない
・聞き取りが苦手で長い説明や指示を受けてもほとんど忘れてしまう
・複数人での会話ができない
医師に配布される診断書の「記載要領」も参考になります。
身辺の安全保持及び危機対応
診断書には以下のように記載があります
事故等の危険から身を守る能力がある、通常と異なる事態となった時に他人に援助を求めるなどを含めて、適正に対応することができるなど。
地震や火災など、通常とは異なる事態が起きたときにパニックにならずに対処でき、人に頼ったり指示に従ったりできるかどうかが問われます。
ポイント
・ガスコンロや包丁など道具の危険性についても理解し扱えるかどうか
・車の前に飛び出さないなど乗り物の危険性を理解し適切に利用できるかどうか
異常事態だけでなく、日常生活における道具や乗り物の危険性や利用法を理解できているかどうかも判断材料です。
具体例
ガスコンロの火を消し忘れることがたびたびあり、包丁も手を傷つけてしまったり、片付けを忘れることがあるため家事などはさせていません。
→「助言や指導をしてもできない、あるいは行わない」に該当すると考えられます。
発達障害で考える 困りごと例
・問題に直面しても、自分で冷静に対処することが難しく、向き合うことができずに逃げてしまう
・家族以外の他人に援助を求めようにも、どう伝えていいのかわからない
・自己否定の気持ちが強く、マイナス思考に入るとその考えにとらわれてしまう
・ぼんやりと考え事や空想にふけることがあり注意散漫になる
・道に迷う、乗り換えを間違える
医師に配布される診断書の「記載要領」も参考になります。
社会性
診断書には以下のように記載があります
銀行での金銭の出し入れや公共施設等の利用が一人で可能。また、社会生活に必要な手続きが行えるなど。
銀行でのお金の引き落としや、役所での手続きなど、社会生活において重要な事項を一人で行えるかどうかが問われます。
手続きでわからない場合に誰かに聞いて確認するなどの柔軟さやコミュニケーション能力も求められるため、難しく感じる方も多いのではないでしょうか。
ポイント
・社会的な手続きや公共施設、交通機関の基本的なルールの理解ができるかどうか
・急なルール変更へ柔軟な対応ができるかどうか
・周囲の状況に合わせて行動ができるかどうか
具体例
一人で役所や銀行に行く場合は、「何のために窓口にいくのか」やATMの操作方法などを綿密にシミュレーションしていても、窓口で支援員の方の強い援助がなければ手続きができず、ATMの前で操作がわからなくなり立ち尽くしてしまい、不審者に間違われてしまったこともあります。
→「助言や指導があればできる」に該当すると考えられます。
発達障害で考える 困りごと例
・期限までに書類を準備して提出するなど、手順や期限があるものが苦手で何から手をつけたらいいかわからなくなる
・混乱してしまい時間も余計にかかってしまう
・書類などを目で追って読み取ることが難しく、読み間違いや書き損じが多い
医師に配布される診断書の「記載要領」も参考になります。
最初にあげた2点のポイント(一人で生活するとしたらと仮定する、同年代の健常者を想定する)をふまえて考えると、ご自身やご家族の困り具合が具体的に見えてきます。
ガイドラインに沿ったメモや資料は医師にとっても参考になるので、積極的に作成してみましょう。
「日常生活能力の程度」の判定
7つの場面をふくめた生活全般の制限(困り具合)を判定します。
5段階で日常生活や社会生活の困難の度合いに応じて選択します。
「引きこもりが顕著でない」「行動のテンポを他の人と合わせることができる」など、具体的な目安もあるため一読しておくとより理解が深まります。
◯適切な食事摂取、身辺の清潔保持、金銭管理や買い物、通院や服薬、適切な対人交流、身辺の安全保持や危機対応、社会的手続きや公共施設の利用などが自発的にできる。あるいは適切にできる。
◯精神障害を持たない人と同じように日常生活及び社会生活を送ることができる。
◯(1)のことがおおむね自発的にできるが、時に支援を必要とする場合がある。
◯例えば、一人で外出できるが、過大なストレスがかかる状況が生じた場合に対処が困難となる。
◯日常的な家事をこなすことはできるが、状況や手順が変化したりすると困難となる。身辺の清潔保持は困難が少ない。ひきこもりは顕著ではない。自発的な行動や、社会生活の中で発言が適切にできないことがある。行動のテンポはほぼ他の人に合わせることができる。普通のストレスでは症状の再燃や悪化が起きにくい。金銭管理はおおむねできる。社会生活の中で不適切な行動をとってしまうことは少ない。
◯(1)のことを行うためには、支援を必要とする場合が多い。
◯例えば、医療機関等に行くなどの習慣化された外出は付き添われなくても自らできるものの、ストレスがかかる状況が生じた場合に対処することが困難である。食事をバランスよく用意するなどの家事をこなすために、助言などの支援を必要とする。身辺の清潔保持が自発的かつ適切にはできない。対人交流が乏しいか、引きこもっている。自発的な行動に困難がある。日常生活の中での発言が適切にできないことがある。行動のテンポが他の人と隔たってしまうことがある。ストレスが大きいと症状の再燃や悪化を来しやすい。金銭管理ができない場合がある。社会生活の中でその場に適さない行動をとってしまうことがある。
◯(1)のことは経常的な援助がなければできない。
◯例えば、親しい人間がいないか、あるいはいても家族以外は医療・福祉関係者にとどまる。自発性が著しく乏しい。自発的な発言が少なく発言内容が不適切であったり不明瞭であったりする。日常生活において行動のテンポが他の人のペースト大きく隔たってしまう。些細な出来事で症状の再燃や悪化を来しやすい。金銭管理は困難である。日常生活の中でその場に適さない行動を取ってしまいがちである。
◯(1)のことは援助があってもほとんどできない。
◯入院・入所施設においては、病棟内・施設内で常時個別の援助を必要とする。在宅の場合においては、医療機関等への外出も自発的にできず、付き添いが必要であったり、往診等の対応が必要となる。家庭生活においても、適切な食事を用意したり、後片付けなどの家事や身辺の清潔保持も自発的には行えず、常時の援助を必要とする。
「日常生活能力の程度」の障害等級との関連性は、専門会合でおおまかな目安が決められています(平成28年)
(5)1級
(4)1級又は2級
(3)2級又は3級
(2)3級または非該当
(1)3級非該当
「日常生活能力の程度」だけで等級が決まるわけではありませんが、先にしめした判定表に当てはめることで等級の目安が分かります。
目安表の当てはめ方
それでは「日常生活能力の判定」「日常生活能力の程度」について分かったところで、目安表にもどって等級を考えたいと思います。
判定平均/程度 | (5) | (4) | (3) | (2) | (1) |
3.5以上 | 1級 | 1級又は2級 | |||
3.0以上3.5未満 | 1級又は2級 | 2級 | 2級 | ||
2.5以上3.0未満 | 2級 | 2級又は3級 | |||
2.0以上2.5未満 | 2級 | 2級又は3級 | 3級又は3級非該当 | ||
1.5以上2.0未満 | 3級 | 3級又は3級非該当 | |||
1.5未満 | 3級非該当 | 3級非該当 |
ヨコ軸はいま紹介した、1〜5段階の「日常生活能力の程度」ですね。
タテ軸の数値は「日常生活能力の判定」を以下のとおり数値化して平均を出したものになります。
7つの場面で「具体例」として出したものを計算します。
6項目が「助言や指導があればできる」なので18、1項目が「できない」なので4の合計で22、平均すると3.1です。
「日常生活能力の程度」は「(3)精神障害を認め、家庭内での単純な日常生活はできるが、時に応じて援助が必要である。」とします。
すると、2級に当てはまることが分かりますね。
このように、ご自身で日常生活の困り具合から等級の目安をつけることができます。
まとめ
いかがでしたか?
この記事では
・精神障害の認定基準のあいまいさから生じていた不公平
・不公平を正すために生まれたガイドラインは日常生活の困り具合を重視している
・日常生活や社会生活を7つの場面にわけて「困り具合」を判定する方法とポイント
・困り具合を5段階で評価する方法
・自分でもできる目安表のあてはめ方
などについて見てきました。
判断基準があいまいに思える「精神の障害」に関する障害年金の判定ですが、ガイドラインなどにより「日常生活の困り具合」によってある程度の目安が得られるようになってきています。
ぜひとも、実際にご自身の状況をメモにまとめて、診断書作成依頼の際の参考資料として医師に手渡してみることをおすすめします。
実際の診断書の各項目において、医師の評価が本人やご家族の考える評価よりも低い場合は、ご自身でも再度確認し、納得がいかなければ医師に確認してみることもできるかもしれません。
また、なかなかご自身やご家族が状況を客観的にとらえるのは難しいという現実もあります。
家族の支援がある場合、生活能力が高くみえることもあるからです。
そんなときは、第三者として専門家の社会保険労務士に頼んでみることも検討してみてください。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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