障害年金をあきらめる前に
「自分で障害年金を請求してみよう」と決心し、いざはじめてみたものの、専門用語や用意すべき書類の難しさに、あきらめてしまうという人は少なくありません。
障害年金の請求をはばむ壁の一つに「初診日の証明」があります。
「初診日が何を指すのかわからない」「病名が変わった場合はどうなるの?」
など疑問を抱えている方も多いのではないでしょうか。
初診日は、障害年金を請求できるかどうかや、受けとれる年金額を左右する大切なポイントです。
一般的にイメージする「初診日」と、「障害年金の請求で使われる初診日」は少し違います。
ただしい初診日について知らなければ、請求しても書類の不備を理由を突き返されてしまうということになりかねません。
この記事では、
・初診日の大切さと正しい理解
・イメージと違う初診日の具体例
・初診証明の作成依頼方法とコツ
・いますぐ初診日の証明をとるべき理由
を分かりやすく説明します。
初診日の証明は時間がたてばたつほど入手が難しくなってしまいます。
障害年金を請求する上で非常に大切な「初診日」を知り、今できる行動をとりましょう。
初診日とは
初診日とは「障害の原因となった病気やけがについてはじめて医師等にかかった日」のことです。
年月だけでなく「日にち」まで確定させます。
初診日は医師や医療機関が証明します。
障害年金の請求では、「この病院にはじめてかかった(その前にどの病院も受診していない)」こと(初診日)を、「診断書」か「受診状況等証明書」で明らかにします。
基本的に、病院を転院していなければ「診断書」、転院していれば「受診状況等証明書」が必要です。
すべての要件にかかわる初診日の大切さ
初診日の大切さは、障害年金を受け取れるかどうかの3つの要件すべてにかかわることからもわかります。
受け取るための要件を簡単にみていきます。
1、どの年金制度に加入していたか
初診日に、国民年金や厚生年金などに加入していることが要件です。
初診日に国民年金(自営業、学生、無職など)に加入していた場合は障害基礎年金
初診日に厚生年金(会社勤め)に加入していた場合は障害厚生年金
初診日に年金制度に加入していない場合でも障害基礎年金の対象となる2つの例外があります。
・初診日が20歳未満の時期にあるとき(国内に住んでいる必要があります)
・初診日が60歳以上65歳未満の時期にあるとき(国内に住んでいる、老齢年金を繰り上げてうけとっていない必要があります)
2、保険料を納めていたかどうか
保険料を納めていたかどうかの要件は2つのパターンがあります。
・初診日の前日において、初診日の属する月の2ヶ月前までに、保険料を「納付済み」「免除(猶予、一部免除含む)」である期間が3分の2以上必要。
逆にいうと、3分の1まで未納でも大丈夫ということです。
・初診日の前日において、65歳未満で、初診日の属する月の2ヶ月前までの直近1年間に「未納」がない(納付済みか免除など)
こちらは令和8年3月末までの特例です。
3、障害の状態を判断するタイミング
障害認定日(初診日から1年6ヶ月を過ぎた日、または、その前に症状が固定した日)に、障害等級の1〜3級(3級は障害厚生年金のみ)に該当している。
どのような障害の状態でどの等級にあてはまるのかどうかは「障害認定基準」(日本年金機構のHPはこちら)に定められています。
以上のように、すべての要件に初診日がかかわっているのがわかります。
初診日が証明できなければ、保険料をおさめていても、障害が重くても、障害年金をうけとれないということになりかねません。
初診日の具体例
一般的にイメージする「初診日」と、「障害年金の請求で使われる初診日」が違うことがよくあります。
いくつかの具体例をあげてみました。参考にしてみてください。
傷病名(病気やけがの名前)が現在と違う
傷病名が確定しておらず、障害年金の対象となる傷病と違う傷病名であっても、同一のものと判断される場合は、他の傷病名の初診日が対象傷病の初診日となる
例えば精神の障害などでは、体調不良で内科医を受診し、体の異常がみつからずに精神科医を紹介されるということも少なくありません。
この場合、内科医を受診したときの病気と精神の病気が同じと判断されれば、初診日は最初に内科医を受診した日となることがあるのです。
他にも
・初診の病院では傷病名が確定せず、転院先などでその後確定した場合
・誤診や専門でない病院で診療を受けた場合
などの例があります。
一度治癒し、再発症した場合
過去の傷病が治癒し、同一の傷病で再度発症している場合は、再度発症し医師などの診療を受けた日が初診日となります。
過去に治癒した傷病が再び発生した場合は、過去の傷病といまの傷病は別のものとして扱われます。
ただし、治癒したと認められない場合は、たとえ長期間治療を受けていない場合でも、病気が継続しているものと取り扱われ、過去の傷病の初診日となります。
「治癒した」という場合、「医学的な治癒」と、「社会的治癒(長期的に異常が見られず、普通に生活や就労ができている期間がある場合)」があり、社会的治癒にあたるかどうかは診断書や申立書の内容で判断されます。
知的障害の場合
先天性の知的障害の場合は出生日が初診日となります
そのため、初診日の証明は不要で、請求できるのは障害基礎年金に限られます。
出生の直後ではなく後から知的障害が判明したような場合でも同じです。
発達障害の場合は、発症日は出生日ですが、初診日は医師等にはじめてかかった日とされますので注意が必要です。
今すぐ「初診日証明」(受診状況等証明書)をとるべき2つの理由
障害年金をいま請求する予定がない人にも、初診日の証明をいまとっておくことをおすすめします。
その2つの理由を説明します。
カルテの保存義務は5年
初診日証明は医師がカルテをもとにおこないます。
病院でカルテの保存が義務付けられているのは5年間です。
しかし、障害年金の請求で求められる「初診日の証明」はさかのぼる時間に限度がありません。
5年より前であっても「初診日の証明」を求められてしまいます。
つまり、初診から時間があけばあくほど、カルテが破棄され証明を入手できない可能性が高くなってしまうのです。
とくに、長期の療養が必要とされる場合や、いろいろな病院・医師をわたりあるいたような場合は、初診の証明が難しくなってしまいます。
あとからでもさかのぼって年金を受け取れる
障害年金は5年間まではさかのぼって受け取ることが可能です。
障害年金は原則として、「障害認定日」(初診日から1年6ヶ月を過ぎた日、または、その前に症状が固定した日)の翌月から支給が開始されます。
いま初診日の証明を入手しておけば、請求が遅れても、5年間はさかのぼって年金を受け取ることができます。
受診状況等証明書の作成方法
受診状況等証明書の作成方法を簡単に説明します。
用紙は日本年金機構のHPからダウンロードできます。
こちらです。
受診状況等証明書は初診の医療機関に依頼して作成してもらいます
初診の病院に電話をし、ご自身のカルテが保存されていることを確認します。
カルテが保存されている場合
受診状況等証明書の依頼方法を聞き、その医療機関の方法に沿って依頼します。
チェックポイント
・「発病から初診までの経過」欄
証明する医師がはじめて受診したものだということが明確にわかる記述があるかどうか。ここに、当院を受診する前に別の医師の診察を受けていたなどの記載があるときは、初診でないということになってしまいます。
・「初診年月日」欄
初診日がきちんと反映されているかどうか
カルテが保存されていない場合
カルテが保存されていないと言われてしまった場合もあきらめてはいけません。
「外部の倉庫にないか」など保管場所を院内に限定せず探してもらうことや、受診受付簿や入院記録が残っている場合には、その記録をの範囲内で証明してもらえないかを確認します。
受診状況等証明書が作成できない場合
受診状況等証明書が作成できない場合はこちらの申立書に、参考資料を添付して請求します。
□身体障害者手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳
□ 身体障害者手帳等の申請時の診断書
□ 生命保険・損害保険・労災保険の給付申請時の診断書
□ 事業所等の健康診断の記録
□ 母子健康手帳
□ 健康保険の給付記録(レセプトも含む)
□ お薬手帳・糖尿病手帳・領収書・診察券
(可能な限り診察日や診療科が分かるもの)
□ 小学校・中学校等の健康診断の記録や成績通知表
□ 盲学校・ろう学校の在学証明・卒業証書
いつでも使える証明書をとっておきましょう
以上のように、初診日の証明は、初診日から時間があくほどに困難になります。
「障害年金を請求するかどうか迷っている」という人も、いざ請求しようと思った時に、「病院に記録がなかった」ということがないように、まずは「受診状況等証明書」をとっておくのが良いでしょう。
まとめ
いかがでしたか。
この記事では
・初診日は障害年金の要件全てにかかわる大切なもの
・障害年金の初診日は一般的なイメージと異なる
・初診日から時間がたつほどに証明は困難になるため、いますぐ初診日の証明をとるべき
について説明しました。
最後までよんでいただきありがとうございました。
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